事業のご紹介 九州建築塾
建築設計事務所勤務の若手所員・学生のみなさんへ
建築の第一線でご活躍中の先生を講師としてお迎えし、熱い議論と設計に対する姿勢、プロセスを経験する事を目的としています。
公益社団法人日本建築家協会九州支部では20代の建築に関わる社会人、大学院生を対象 としたJIA 九州建築塾の塾生を募集します。
レクチャー、プレゼンテーション、ディスカッション、ワーキング等を合宿形式で昼夜行う集中的で高密度のプログラムです。1998 年から過去九州全域で計20 回行われている長年続く教育プログラムです。
講師には第一線で活躍する建築家に加え、地元で活躍する若手建築家も参加しています。
様々な視点から建築を考えることによって多様な展開を講師とともに模索し、新しい考えを吸収する力、決められた時間内に自分の考えをまとめる力を身につけてください。情熱にあふれる若き建築家の卵の参加を期待します。
熊本地震から6年となり、県内の1715戸全ての災害公営住宅整備が完了しております。 災害公営住宅の設計は、全国で起こり得る災害に対して建築家ができる役割の一つで す。熊本地震の教訓を、建築塾を通じて共有することで、九州から発信する柔軟な発想、 新たな可能性を求めます。情熱あふれる若き建築家の卵の参加を期待致します。
テーマ「災害公営住宅から考える個と群の関係」 活動報告
【主催】公益社団法人日本建築家協会九州支部 【担当】JIA 九州支部熊本地域会
【講師】講師 長野 聖二( 株式会社 長野聖二建築設計處)
講師 原田 展幸( 株式会社 ライフジャム一級建築士事務所)
【会場】ホテルグリーンピア南阿蘇
【日程】2022 年9 月16 日( 土)-17 日( 日) 【塾生】11 名
◇課題 :木造の戸建て又は長屋の災害公営住宅設計
◇テーマ :災害公営住宅から考える個と群の関係
◇計画建物 :戸建て又は長屋8戸(1LDK×2、3LDK×6戸) 集会所無し
◇塾プログラム :
9/16(金)
11:00 熊本駅集合
13:00 災害公営住宅 南阿蘇村長陽西部団地見学
(株)ライフジャム一級建築士事務所+(株) トポスペース建築研究所
(第25 回アートポリス推進賞選奨受賞)
14:30 震災ミュージアム工事現場見学(o+h, 産鉱設計JV)
16:30 ホテルグリーンピア南阿蘇到着
17:00 レクチャー
講師:長野 聖二氏 (株)長野聖二建築設計處
原田 展幸氏 (株)ライフジャム一級建築士事務所
18:30 懇親会
20:00 作業開始
9/17(土)
7:30 朝食
10:00 提案発表+クリティーク
12:30 終了
13:00 解散
※今回の建築塾は1 泊2 日の日程という事もあり、課題は事前課題として出しており、当日は案をグループで持ち寄ってまとめていくという作業時間とするようにしておりました。
コロナで2 年間延期した後の3 年ぶりの熊本での開催となりました。
熊本地震から6 年という歳月がたった被災地をみていただく事、アートポリスコンペになった震災ミュージアムの工事現場をみていただく事、地震被害で家を失った人が住む災害公営住宅の施工実例を確認して、塾の課題として災害公営住宅に取り組む事を塾生に行なって頂きました。
塾生は、九州各地から設計事務所に勤務する若い社会人や大学生の11 名が参加してくれました。それに加えてJIA 九州支部役員9 名と熊本地域会会員10 名、講師2 名の総勢32 名で塾生と一緒に現場見学等同行いたしました。
災害公営住宅の南阿蘇村長陽西部団地では、実際に設計を行った(株)ライフジャム一級建築士事務所の原田氏から、計画概要について説明を行って頂き、住宅という個の建築の集まりであるが、その中でのコミュニティー形成ができるような計画の重要性を説明頂きました。長陽西部団地は、高低差処理を兼ねたスロープ状の遊歩道が住戸間にある共用空間である「間守土間」を通りながらみんなの広場に繋がるという計画で、動線操作でコミュニティー形成を計る手法が用いられていました。配置計画も南側向きに平行にずれながら配置され、良好な住環境が形成されていました。実例見学後、塾生の課題敷地である長陽西部団地横の空き地を提案するグループで見学し、南阿蘇の雄大な自然環境の中での建築的回答をグループ間で協議する姿が見られました。
その後は、震災ミュージアムの工事現場に移動し、基礎工事の段階の現場見学と、設計者であるo+h(産鉱設計JV)のスタッフで現場監理者の坂野さんから、震災ミュージアムのコンペからの変遷や構造の概要、素材の選定内容等をレクチャー頂きました。
翌日の講評会は、A,B,C の順番で発表を行い、講師である原田氏、長野氏から講評を受けるという形式で進めました。
女性4 人のA グループは、敷地西側の山と呼応したような大きな山形の屋根を4 戸の住戸に架け、プライベートとパブリックの中間領域を作るという案で、模型まで作成してプレゼンテーションを行いました。
講師からは、各住戸の居住性を指摘されつつも短時間でクオリティーの高い案をまとめた事が評価されていました。
男性4 人のB グループは、住戸間の配置計画を「ハの字」で計画し、一定の距離感をとるという事と住戸の中に広い土間空間を作り緩衝空間として利用できるようにする事で個と群の関係について回答した案でした。こちらも模型まで作成してプレゼンテーションを行いました。
講師からは、土間が入る事で住戸面積が大きくなりすぎる事や、「ハの字」に開いた部分の扱いが中途半端な点が指摘されていました。
男性3 人のC グループは、コミュニティー形成を共通認識から作るというコンセプトのもと、敷地横に学校がある事からグラウンドという共通認識を団地内に作る案を提案いたしました。夜中2 時まで案を検討していた事もあり、まとめるまでの時間がなかった事から講師からは住戸内部の計画や、グラウンドの配置について指摘を受けていました。
全部の発表後、九州支部長の松山氏より、女性4 人のA チームの案は大胆で面白くなる可能性を秘めている案ではあるものの、この敷地に大きなスケールをもつ建物を作る感性を疑うべきとの指摘を受けました。
また、男性2 チームの案は現実的すぎて、面白みに欠けるという指摘を受け、塾生全員に対して学生の頃考えた事が社会人になる事で、提案にブレーキがかかりすぎており、所長世代が若いスタッフに求める事は所長世代が考えれない案を提案の糸口として出してくれる事を期待してる事であるため、まとまり過ぎずに考えて欲しいとの意見を頂きました。
一方で、時間のない中でプレゼンテーションまでまとめ上げ、形にした事は評価すべきとの意見も合わせて頂きました。
最後に、時代の九州の建築を担う塾生に頑張って欲しいとの事と是非将来は、JIA に入会し、次の世代として活躍して欲しいとの思いもお伝えされていました。
こうして、短時間ではありましたが建築塾は無事終了し、塾生も満足して帰っていく様子が見れたのが本当に良かったと思います。
塾生からは感謝の声とともに1 泊2 日の日程だったため役員や地域会員と十分に話する時間がなく少し残念だったとの声もあり、次回の開催はコロナが収束して通常通り2泊3日で多くの塾生に参加いただける事を願っております。
今回、運営のご協力頂きました支部役員の皆様、熊本地域会の皆様、スタッフを建築塾に参加させて頂いた事務所経営者の皆様、講師の長野様、原田様にこの場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。
(公社)日本建築家協会九州支部 熊本地域会会長 林田直樹
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